21世紀COEプログラム(2003-2007)
都市空間の持続再生学の創出
<拠点リーダー:大垣 眞一郎>
20世紀の市街地拡張型・全面再開発型の都市開発を通じて、諸先進国では巨大で高度な都市構造物の集積体が形成されてきました。しかし、今日もはやこうした従来の構造物建設中心の技術では、環境の制約と経済社会文化的変動に適応した都市空間を維持することが困難になっています。すなわち人類の居住と社会活動を支える社会的共通資本の総体を持続的に維持発展させ、安全で効率的なだけでなく歴史・文化・地域性を継承しつつ高い生活の質を保障する快適で美しい都市空間を持続的に再形成しようとする社会的要請に応えることが困難となっているのです。したがって、今日、社会的共通資本の再構成を可能にする新しい知の体系とそれを実現する技術が求められていますが、これを創り出すためには、従来の構造物建設・設計の技術の枠を超えて、(1)環境やリスクマネジメントに関する技術、(2)歴史的文化的資産を含む既存構造物の地域性を考慮した保全・継承・再生・再利用に関する技術、(3)多様な主体による個々の都市空間形成行為を調整し統合するコミュニケーションや合意形成・計画策定・空間管理に関する技術を、相互に深く関連させながら進化させ、統合化する必要があります。
これまで、都市空間の形成に関しては、建築学、土木工学、都市工学のそれぞれの学問分野において、各々、異なる時空間スケールや構造物を対象としながら、先端的な学術が蓄積され、良好な都市空間の形成に貢献してきました。新たな宅地基盤を開発し新規構造物を建設することが中心であった従来の都市空間形成方式では、こうした分化した専門領域の形成と各々の学術上の探求・蓄積が有効でした。しかし、各分野の成果の上に形成された既存ストックが相互に依存しあう形で高度な社会的共通資本の全体を構成し、また、人間に対するリスクと環境に対する負荷の問題のように、部分の最適化が必ずしも全体の最適化に帰結しないような性質の問題の解決が急務となった現代の都市空間を対象とする場合には、これら3分野の学術上の探求・蓄積を効果的に統合することこそが本質的に重要です。
本拠点ではすでに、
都市持続再生の課題は各国に共通的であり、都市持続再生という目標概念は有効であること、
具体のアプローチは各国の風土・歴史・制度・文化に応じて多様であるべきこと、
特にアジアにおいては、水環境・ゴミ処理・水害対策・ハウジング政策・土地利用計画・公共交通政策・産業政策・基幹施設の維持再生技術・歴史的景観保全等のトータルな分野融合的アプローチがなければ、安全安心で活力のある都市形成・都市再生が不可能であり、その相互調整技術が重要であること、などの知見が得られています。