研究課題 / Research

下水道ネットワークで浸水予測の重点箇所を特定し、3G/LTE通信によるマンホールアンテナによる下水管内水位リアルタイムセンシングシステムを構築する。マンホール式アンテナにより下水管内水位をリアルタイムに取得するために、鶴見川都市排水区を対象にマンホール設置箇所の選定と最適配置を検討することを目的とする。また、排水溝内などにおける水位上昇を検知する、低コストで容易に設置可能な浸水センサを開発する。下水管内水位観測値をもとに、データ同化によってシームレスモデルの下水道網の水位や流量の物理状態量を補正し、浸水予測精度を向上させる技術を開発する。

河川洪水モデルと下水道モデルに加えて、沿岸水理特性をも統合して考慮できる、「河川、下水道、海岸のシームレスモデル」に基づく実時間氾濫予測システムの構築を目指すために、下水管内水位観測データを取得して都市流出及び浸水現象の再現性向上のためのシームレスモデルの検定や検証を行う必要性がある。河川洪水、高潮、大雨などのさまざまな氾濫因子を、河川・下水道・海岸のシームレス結合モデルに与えて氾濫解析を実施し、沿岸都市流域における水災害ハザードを評価する。氾濫解析結果を土研グループの構築するデータアーカイブシステムに提供する。

詳細に道路網や街区の土地利用状況、さらにはすべての都市河川や下水道管路網をデータとして組み込み、力学的な基礎原理のみに基づき、モデル係数・補正係数などに一切依存せずに浸水現象を忠実かつ精緻に予測するモデルを開発する。鶴見川都市流域における一排水区を対象にモデルを適用し、リアルタイム浸水予測を目指したデータ同化と組み合わせた浸水予測モデル手法との整合性を検討することで、相互に精度検証を行う。そして、シームレスモデルの予測精度検定を実施する。

河川水位、XRAINレーダ雨量、数値気象予測値、マンホール水位センサなどのデータをアーカイブする情報収集システムを構築する。レーダ観測雨量によって降水予測情報の誤差評価を行い、統計的な予測誤差に基づき、予測不確実性をアンサンブルの幅で表す降水予測手法を開発する。レーダ雨量、数値気象予測モデル出力、シームレスモデル解析結果等を収集・蓄積するデータアーカイブシステムを開発する。そして、浸水対応のリスクコミュニケーション向上や、緊急対応のタイムライン作成等、自治体・地域社会の水災害ハザード対処能力を高める浸水リスク管理手法を考案。