2023-2025
科学研究費補助金(基盤(B))
降雨特性を反映した都市沿岸域の雨天時越流水に伴う糞便汚染の類型化と低減策の評価
[代表者:古米 弘明]
研究目的
海水浴イベントを開催しているお台場海浜公園を対象として、雨天時越流水に伴う糞便汚染を予測して、水浴に伴う健康リスクを管理するために必要な科学的な知見を提供することである。まず、過去に蓄積した降雨後水質調査データに加えて新たな入手する連日採水調査データを活用して、越流水汚濁負荷量の時空間分布を反映可能な3次元流動水質モデルの検証を充実させる。そして、降雨特性に基づいて類型化された降雨タイプ別に、お台場海浜公園おける大腸菌等の濃度変化のデータベースを構築する。これにより、発生降雨の特徴から降雨タイプを同定して糞便汚染状況の予測を行うことで水浴の可否を判断するシステム構築に貢献する。また、合流改善対策としての高速ろ過処理や雨水滞水池などの施設やグリーンインフラなどの雨水流出抑制施設の導入による汚濁低減効果を定量評価する。加えて、導入された施設を降雨特性に応じて効率的に運用する手法を検討する。
2023年度 研究実績の概要
1)お台場海浜公園における糞便汚染に関する夏季の連日採水調査:お台場海浜公園における海水浴イベント(お台場プラージュ)の期間中に、水中スクリーンの内外で連日採水を実施した。また、港区の協力を得て上げ潮時と下げ潮時において採水された試料も入手した。そして、大腸菌、腸球菌、大腸菌ファージの測定を実施して、晴天時や降雨後の糞便汚染指標のデータを蓄積した。また、薬剤耐性菌の存在について試験的な分析も実施した。
2)降雨と潮汐条件を反映した糞便汚染の類型化と大腸菌濃度変化のデータベース化:区部の8排水区の降雨特性を用いた降雨の類型化を新たに行った。そして、類型化降雨グループごとの8排水区から発生する雨天時越流水量のばらつきを整理した。その結果、従来の区部13地点の降雨特性を用いた類型化に比較して、グループ内での雨天時越流水量のばらつきが大幅に低下することを確認した。そして、類型化降雨グループの代表的なイベントを対象に、大潮と小潮において降雨が発生するとして、その降雨開始を満潮や干潮など潮位の異なる時点に設定して、既存の3次元流動水質モデルで降雨後のお台場における大腸菌濃度変化を計算した。これにより、様々な潮汐条件における大腸菌濃度変化のデータベースを作成した。
3)沿岸域3次元流動水質モデル解析と汚濁対策シナリオ分析:汎用性の高い3次元流動・生態系モデルであるEcoPARIを基礎にしたお台場周辺海域のモデル構築に着手した。そして、過去に実施した降雨後水質調査データのあるイベントについてモデル計算を実施した。出水時における隅田川河口付近の塩分濃度や沿岸域での大腸菌濃度の再現性に課題はあるものの、今後のモデル解析計算の基盤を構築した。また、東京都下水道局により合流改善対策の下水道施行令改正から令和4年度までに設置導入された雨水滞水池などによる貯留量データを入手して、その整理を行った。